三菱UFJ信託銀行は、2021 年 12 月 20 日に公表した元社員 2 名が顧客の金銭を着服する不祥事の発覚以降、元社員 2 名が担当していた顧客に加え、同社の全営業担当者が担当する顧客との取引について、類似の方法による不正な取引がないか、順次、調査・確認を行ってきた。
また、本事案の発覚後直ちに、顧客対応状況のモニタリングと原因分析を踏まえた実効性ある再発防止策を構築する枠組みとして、社長を委員長とする「業務改善委員会」を設置し、不正の予防・予兆把握・早期発見の観点での牽制・モニタリング態勢の強化、職場環境や営業・業務プロセス上の課題の把握と改善策の策定に着手。
なお、策定に関しては、取締役会傘下に設置した社外取締役全員で構成する「社外取締役特別調査委員会」の検証・提言を受け、客観性・実効性の確保を図った。以下、判明した事実および調査状況、ならびに顧客への対応や再発防止に向けた弊社の取り組み状況について公表した。
<1 例目の事案>
着服行為期間: 2007 年 5 月~2020 年 12 月
被害状況 :14 名、9,750 万円(中野支店・吉祥寺支店の顧客)※2021 年 12 月 20 日の公表以降、同社の調査で新たに 5 名、4,380 万円の被害が判明
着服の方法: 顧客から事前に預かった書類を悪用し、顧客が来店しているため単独での現金引渡しを行うと偽って事務担当者から現金を受領し、着服。
<2 例目の事案>
着服行為期間: 2018 年 11 月~2020 年 3 月
被害状況 2 名、442 万円(中野支店の顧客)
着服の方法: 顧客から事前に預かった書類を悪用し、顧客が来店していると見せかけて店舗内の出金機を備えた顧客対応ブースで単独で操作を行い、現金を着服。
当該調査では、元社員が過去に接触した可能性のある 5,851 名義の顧客に対して、面談、電話等の方法により、お取引内容に不審な点がないかの確認を実施した。
本事案判明後、同社では、元社員の着服の方法などを踏まえ、元社員以外の社員による同様の着服行為等の有無について、全店調査を実施。調査対象や実施方法等については、調査を適切に進めるため、調査計画段階から実行段階を通じて、外部弁護士等との協議を実施した。
具体的には、当事案と類似する手続きに関する伝票調査、防犯カメラ映像調査、顧客へのヒアリング等の掘り下げた調査を実施。また、同社ホームページを通じて注意喚起を実施するとともに、同社と取引しているすべての顧客へ、不審に思われるお手続きがないかを確認する書面を発送し、電話での専用の相談窓口も設置して、顧客の取引内容に関する不安の解消に努めた。
さらに、全社員向けに不正調査のアンケートも実施し、調査の網羅性を補完した。上記の調査の結果、元社員以外の社員による着服等の事案は確認されていない。
本事案の原因分析の結果、不正防止の観点での社員管理・牽制・啓発、営業・事務・アフターフォロー各プロセスの牽制・モニタリング態勢、経営における不正リスク管理態勢の強化、組織の不正抑止力・発見力の向上に課題を認識しており、以下の再発防止への取組みを行っていく。なお、原因分析と再発防止策の策定に際しては、社外取締役で構成される「社外取締役特別調査委員会」から妥当性の評価を得ている。
(1) 不正防止の観点での社員管理・牽制・啓発
管理職が部下の異変等を早期に察知できるような予兆把握の研修、定期的な状況確認等、知見蓄積の枠組みを整備する。
全社員を対象に、年 1 回の不正防止研修を実施するとともに、リテール部門の所属員向けには、不正行為の未然防止と高齢者取引・サービス教育の拡充も視野に入れた冊子を配布する。
全社員を対象に不正防止に係る調査アンケートを毎年 1 回定例実施する。
リテール部門の担当者交代時の不正チェックルールを強化する。
(2) 営業・事務・アフターフォロー各プロセスの牽制・モニタリング態勢
営業店における現金出庫時のルール・現金出庫後のモニタリングを厳格化する。
弊社は信託銀行という業務特性からご高齢のお顧客の取引が多いため、取引に特に配慮が必要な高齢者には、取引内容の定期確認のご案内と合わせ、アフターフォローを担う専担チームを新設する。
リテール部門のコンプライアンス機能を強化するために「リテールコンプライアンス部」を新設し、現金取引のみならず個人顧客との取引全般のモニタリングを実施する。
コンプライアンスプログラムにおいて「不正防止プログラム」を新設し、PDCA を実施するとともに、監査部署における「監査プログラム」の改訂や公認不正検査士の資格取得を推進する等、不正防止モニタリング態勢を強化する。
(3) 経営における不正リスク管理態勢の強化と組織の不正抑止力・発見力の向上
コンプライアンス委員会傘下に「不正防止専門部会」を設置し、再発防止策の実効性を四半期毎に確認するとともに外部知見等も取り入れ、不正防止の管理体制を強化する。
超高齢社会の到来を踏まえたご高齢者への適切な対応を促進するための部門横断のプロジェクトチームを設置するとともに、社外有識者の方に参画するアドバイザリーボードを設置する。
リスク管理委員会傘下に「リテール業務運営モニタリング検討部会」を設置し、個人顧客との取引全般のリスク管理態勢を強化する。
組織の不正抑止力・発見力向上の観点で、組織内の上司部下、所属組織をまたぐ社員間、経営陣と現場社員との対話機会の充実など現場のコミュニケーションを一層活性化する施策を推進するとともに従業員エンゲージメントスコアの定期計測を通じ、施策の実効性評価と改善の取組を継続する。
220610_4.pdf (mufg.jp)